2023年12月 5日 (火)

少発

アメリカカンザイシロアリ飼育ケース 今年はあまりご紹介できていなかった、アメリカカンザイシロアリ飼育ケースからご紹介したいと思います。今年の傾向として、羽アリの発生が少発であったことが挙げられます。

アメリカカンザイシロアリの羽アリは季節を問わず、真冬でも発生します。しかし当社で飼育中のアメリカカンザイシロアリの羽アリが最も多く発生するのは、5月中旬から下旬です。これは実際の現場でも同傾向にあります。

しかし今年は2月に纏まった発生があり、例年最も発生する5月中下旬には発生がありませんでした。その代わりに7月下旬に纏まった発生がありました。過去にもこのような現象は見られたことがあり、結論的にはアメリカカンザイシロアリの羽アリ発生時期は特定していないということになります。

残念ながらアメリカカンザイシロアリの生態を理解していないシロアリ防除業者のホームページには、6~9月の日中に羽アリが発生すると記載されています。酷いシロアリ防除業者になると、アメリカカンザイシロアリすら見たことがないのが現状です。生態を理解していないのに、対策を実施することなどあり得ません。

小員もアメリカカンザイシロアリの生態を、理解しているとは思っていません。だから、飼育や現場での観察から生態を理解しようとしているのです。シロアリ対策の基本はシロアリの生態を考慮することで、薬剤を大量に使うことではありません。ましてや室内で処理するケースの多いアメリカカンザイシロアリ駆除の現場では、どれだけ薬剤使用量を減らすことが重要です。

| | コメント (0)

2023年2月22日 (水)

復活

糞の排出は復活した丸太 昨日ご紹介した経理作業や研修会資料づくりなど机にかじりついた状態となっています。そこで今日は、飼育中のアメリカカンザイシロアリ飼育ケースからご紹介したいと思います。

右の写真はオヤシロアリ技研の尾屋さんからいただいた、アメリカカンザイシロアリの生息が確認された丸太です。この丸太からアメリカカンザイシロアリを採取し、薬剤試験に供試しました。かなりの数を採取したので、この丸太から糞の排出は15年以上確認されませんでした。しかし15年が経過したころから、再び糞の排出が確認されました。最近では有翅虫(羽アリ)の羽化も確認されています。

アメリカカンザイシロアリの有翅虫が木材中に侵入し繁殖し始めてから、糞の排出まで早いと1年以内で排出されるケースもありますが、この飼育事例のように何年も経過してから排出されるケースもあります。

室内で糞の排出が確認された場合、数年前に木材中へ侵入したと考えるのが一般的です。ですので近くの場所は他の場所にも侵入していると考える必要があります。アメリカカンザイシロアリの完全駆除は外部侵入もあるため事実上困難であり、糞の排出が確認された段階で丁寧に一つづつコロニーを駆除する必要があるのです。

| | コメント (0)

2023年1月18日 (水)

水は飲みます

水を飲むアメリカカンザイシロアリ 右の写真は、飼育中のアメリカカンザイシロアリ飼育ケース内の様子です。水を与えるとアメリカカンザイシロアリの擬職蟻が水を飲みに出てきます。

アメリカカンザイシロアリは木材中から水分を取って生息しているとされています。しかし乾燥した条件下では、水分不足となりますのでアメリカカンザイシロアリは積極的に水を取りに行きます。

その証拠にアメリカカンザイシロアリが発生している実際の現場では、窓枠や垂木など雨のかかる部分でよく被害が確認されます。薬剤評価試験を実施していても、湿度の高い条件下の方が喫食率は高くなります。昆虫である以上、水は必須成分なのです。

アメリカカンザイシロアリは水を必要とせず、乾燥して木材に生息すると記載しているホームページがあります。残念ながらアメリカカンザイシロアリを見たこともない業者が書いている場合がありますので、ご注意ください。

| | コメント (0)

2022年12月18日 (日)

好き嫌い

丸太外周部アメリカカンザイシロアリ被害 久しぶりに、アメリカカンザイシロアリ飼育ケースからご紹介したいと思います。写真がアメリカカンザイシロアリが生息中の丸太です。オヤシロアリ技研の尾屋さんからいただいた個体で、飼育始めて15年経過しています。

食べられているのは丸太の外周部が中心で、好き嫌いが明確にあります。硬い部分よりも軟らかい部分が食べ易いようなので、このような傾向となります。建築士の先生やハウスビルダーさんから、アメリカカンザイシロアリにヒノキはどうですかとよくお問い合わせをいただきます。残念ながら、アメリカカンザイシロアリはヒノキが好きなようで、被害は甚大となります。

特に関西ではヒノキ神話の傾向が強いようで、ヒノキはシロアリの被害を受けないと考えておられる建築関係の方が多いようです。アメリカカンザイシロアリ以外のヤマトシロアリでもヒノキは被害を受けます。赤身と呼ばれる中心部でも被害を受けた事例を実際に見ています。世間の俗説には、いい加減なことが多いのでご注意ください。

| | コメント (0)

2022年10月11日 (火)

膨らむ腹部

腹部が膨らんだ生殖虫 本日は久しぶりに、アメリカカンザイシロアリ飼育ケースからご紹介したいと思います。今年のアメリカカンザイシロアリの羽アリは、コンスタントに発生しました。

真冬の1月及び2月も、羽アリの発生が確認されました。アメリカカンザイシロアリと対峙したことがないシロアリ防除業者のホームページでは、6月から9月の日中に発生すると記載されていることが多いようです。しかし、広島県内の現場や兵庫県内の現場の小屋裏で、実際に活動中の羽アリを確認しています。ですので羽アリの発生時期を特定していること自体、アメリカカンザイシロアリを理解していない証拠です。

ちなみに当社で飼育中のアメリカカンザイシロアリは、5月中旬に最も沢山羽アリが発生しました。その後もズルズルと羽アリの発生が続きましたが、これがアメリカカンザイシロアリの生態なのです。

ちなみの写真の落翅虫は、恐らく先月発生した羽アリが翅を落とした個体です。腹部が膨らんでいるので、既に交尾産卵した生殖虫と考えれます。

| | コメント (0)

2022年1月 7日 (金)

給水

水を飲むアメリカカンザイシロアリ擬職蟻 今日はまだまだ現場が本格的に動いていないため、アメリカカンザイシロアリ飼育ケースから紹介したいと思います。前回ご紹介した飼育ケースと同様に、シロアリフォーラムメンバーである尾屋シロアリ技研の尾屋さんからいただいた個体です。薬剤評価試験用として13年前にいただいた丸太で、虫体採取後そのまま飼育ケース内に放置していました。

試験のため虫体を採取した後の丸太は、その後10年以上殆ど糞の堆積は確認されませんでした。もしかしたら虫体を使い切ってしまい、絶滅したかと思われましたが、昨年から再び糞の堆積が確認され始めました。どうやら復活したようで、非破壊シロアリ探知機ターマトラックを使い確認すると、結構な動きも確認されました。

こうしたアメリカカンザイシロアリの生息する丸太に対して、定期的に給水しています。アメリカカンザイシロアリは木材中の水分で生息するとされていますが、実際に飼育するといろいろなことが見えてきます。

今回、給水の間隔が少し空いたことから、給水したところ内部からアメリカカンザイシロアリ擬職蟻が這い出てきました。給水した箇所に集まり、水を飲んでいます。木材が乾燥すると、木材中の水分だけでは厳しいようです。実際の現場でも雨水の当たる垂木屋外側などでよく被害が確認され、水の取り易さを考えると頷ける内容です。教科書に書かれていることを信じると、痛い目に合うので注意が必要です。

| | コメント (0)

2022年1月 3日 (月)

アメリカカンザイシロアリ飼育ケース

11月に確認されたアメリカカンザイシロアリ羽アリ死骸 昨年ほとんどご紹介できなかった、アメリカカンザイシロアリ飼育ケースの様子をご紹介したいと思います。シロアリフォーラムメンバーである尾屋シロアリ技研の尾屋さんからいただいた個体で、飼育し始めて14年が経過しています。

昨年の羽アリは、2月に発生して以降、4月、6月、10月及び11月に確認されました。文献や資料などによるとアメリカカンザイシロアリの羽アリは、6〜9月の日中に発生するとされています。これは一般論でしかなく、実際の現場では季節に関係なく発生することをこの目で確認しており、2月の小屋裏で羽アリを確認したことがあります。6~9月の日中に羽アリが発生するというシロアリ防除業者がいれば、それはアメリカカンザイシロアリの現場経験がない又は経験が浅いことを表しています。当然ですが経験がない又は経験が浅いシロアリ防除業者に駆除を依頼すると、結果がどうなるかはご察しのとおりです。

シロアリ駆除を行うのに必要なのは、薬剤を大量に使用することではありません。シロアリの生態を考慮し、適切に薬剤を使用することが重要です。薬剤使用量はお住いの方の安全に配慮すると、必要最小限の薬剤量で処理することが重要です。薬剤の大量散布では対処できないシロアリであることは言うまでもありませんので、ご注意ください。

| | コメント (0)

2021年7月30日 (金)

確認された落翅

確認された落翅 昨日新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンを接種した関係で、予定していた現場作業は延期とさせていただきました。発熱や腕の痛みのリスクが想定されたためで、実際には微熱程度で治まり腕の痛みもほとんどありませんでした。現場作業を延期した関係で、今日はシロアリ飼育ゲージをご紹介したいと思います。

写真は兵庫県神戸市内の物件からいただいた、アメリカカンザイシロアリの被害を受けた木材です。持ち帰って1年ほどになりますが、順調に糞の排出が続いています。水やりのため久しぶりに確認したところ、糞に混じって落翅が確認されました。落翅虫の死骸が確認されなかったことから、無事に木材中へ潜り込めたものと考えられることから今後の繁殖に期待したいと思います。

ちなみに、の地域での羽アリ発生事例で最も多い時期は5月中旬です。5月下旬の時点では確認されていないことから、それ以降に発生したものと考えられます。そもそもアメリカカンザイシロアリの羽アリが年中発生しますので、あまり時期を気にする必要はないと思います。

ちなみに当社で飼育しているアメリカカンザイシロアリは、オヤシロアリ技研の尾屋さんからいただいた紀伊半島南部の系統、兵庫県西宮市内、今回の兵庫県神戸市内の3地域です。ちなみに地域差は見られず、年中羽アリが発生します。

| | コメント (0)

2021年4月19日 (月)

動きが早くなってきました

活性が上がってきたイエシロアリ 右の写真は、飼育観察中のイエシロアリ飼育水槽の様子です。先月の啓蟄の頃にはまだまだ動きが緩慢でしたが、今月に入ると動きが早くなってきました。

ここのところ案件が多いため飼育水槽内に管理が滞っており、若干水管理ができていませんでした。巣内は少し乾燥気味に寄っていたようで、水を供給すると一斉に水の採取に職蟻が集まりました。現在の水供給用のタワーは、使用開始直後は問題ありませんでした。しかしシロアリが蟻土を積み上げることで、水供給に不具合が生じました。そのためでモディファイする予定ですが、まだできていません。

水不足状態のコロニーを水を与えると、面白いように水の採取にくる様子が確認されます。動画を取りたいのですが、驚くスピードで採取するためなかなか難しいところです。観察しなければわからないことはまだまだありますので、しっかりと観察して行きたいと思います。

| | コメント (0)

2021年3月 5日 (金)

2021年啓蟄のイエシロアリ

2021年啓蟄のイエシロアリ 右の写真は飼育観察中のイエシロアリで、啓蟄である本日撮影しました。啓蟄とは二十四節気の一つで、冬籠りの虫が這い出るという意味があります。

例年、啓蟄の日のイエシロアリの動きを確認しています。昨年は例年よりも動きは早かったのですが、今年は例年とおりの動きでした。飼育ケースの横には最低最高温度計があり、毎年温度とシロアリの動きについて記録しています。昨年は例年よりも最低温度が3度以上高くなっていましたが、今年は昨年よりも寒かったようでその分活性が低くなったものと考えられました。

今年の傾向として寒い日と暖かい日の差が激しく、トータルとしては暖冬傾向にありました。冬季の影響がシロアリの活性最盛期にどのような影響を与えるかを確認しするとともに、羽アリ発生の整合性を見ていきたいと思います。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧