昨日に引き続き、住宅医スクールの際にいただいたご質問についてご紹介したいと思います。スクールで出た質問として『ホウ酸製剤は土壌処理可能でしょうか』という内容です。
ホウ酸製剤は食毒剤ですので、シロアリが体内に取り込むことで効果が発揮されます。そのため、シロアリの齧る対象である木材に対して処理するのが基本です。ですので齧らない土やコンクリートに対して、効果が得られないことは言うまでもありません。
体表面に付着したホウ酸をグルーミングで体内に取り込むのではないかと主張されるかたもおられるようですが、シロアリを用いた実験では有意性のある効果は得られませんでした。
齧る意味からすると断熱材への散布が効果があるのではと考えられますが、実際には齧っても体内に取り込まず吐き出すケースが殆どですのでこちらも有意性のある効果は得られません。
ちなみに右の写真はシロアリ被害の確認された床板に、お施主さまがホウ酸製剤を塗布されたそうです。おそらく規定量の2倍以上は塗布しているとのことですが、大引や根太などでは今もシロアリは活動中です。
ホウ酸製剤が処理された木材をシロアリが齧り、体内に取り込まれることでシロアリは死に至ります。その死んでいくシロアリを見て、他のシロアリはホウ酸製剤が処理された木材を食べなくなります。ホウ酸製剤は木材を守ることであり、その意味では有効性のある薬剤です。特に新築場面では建築後に処理できない箇所まで処理できるため、長期に渡る防蟻効果は有効です。
但し、シロアリ駆除効果には適してはいない効果発現方法となっています。勿論、ホウ酸製剤の特性とシロアリの生態、建物構造を理解した上で処理すればシロアリ駆除は可能です。しかしそれであれば多少なりとも毒性のあるホウ酸ではなく、他の材料を使用して対処するほうが理にかなっているのです。シロアリ駆除は薬剤で駆除するのではなく、現場での調査結果から総合的に判断して、最良の策を模索するのがシロアリ技術者なのです。薬剤大量散布する人間は、シロアリ技術者ではないのでご注意ください。
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